中性脂肪と血液検査で基準値を知る方法

健康診断で中性脂肪の数値が気になる方へ向けた記事です。中性脂肪の基準値や高値の原因、生活習慣の改善方法について詳しく解説しています。あなたの血液検査の結果、中性脂肪値は適正範囲内ですか?

中性脂肪と基準値の関係

中性脂肪の基本情報
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基準値の範囲

空腹時30~149mg/dl(正常値)

⚠️
高値の目安

150mg/dl以上で脂質異常症と診断

💪
体内での役割

エネルギー源・体温維持・内臓保護

中性脂肪の基準値と血液検査での見方

健康診断の結果表で「TG」や「トリグリセリド」と表記されているのが中性脂肪の数値です。中性脂肪の基準値は空腹時で30~149mg/dlとされています。この範囲内であれば正常と判断されますが、150mg/dl以上になると「脂質異常症(高トリグリセライド血症)」と診断されることがあります。

 

血液検査を受ける際の注意点として、食事の影響を強く受けるため、正確な数値を知るためには8~12時間程度の空腹状態で検査を受けることが重要です。食後に検査を受けると、一時的に中性脂肪値が上昇することがあるため、健康診断の前日は夜9時以降の食事を控えるようにしましょう。

 

また、中性脂肪値は日によって変動することがあるため、1回の検査結果だけで判断せず、定期的に検査を受けて推移を見ていくことが大切です。

 

中性脂肪とトリグリセリドの違いと関係性

「中性脂肪」と「トリグリセリド」は同じものを指す言葉として使われることが多いですが、厳密には少し違いがあります。トリグリセリドは中性脂肪の主要成分であり、グリセロールと3つの脂肪酸が結合した化学構造を持っています。血液検査では、このトリグリセリドの量を測定して中性脂肪値としています。

 

中性脂肪は体内で最も多く存在する脂肪成分で、食事から摂取した脂質や糖質の余剰分が肝臓で合成され、全身を巡ります。エネルギー源として使用されなかった中性脂肪は、皮下脂肪や内臓脂肪として蓄積されます。

 

中性脂肪は体にとって必要な成分であり、エネルギー源としての役割だけでなく、皮下脂肪となって体温を維持したり、内臓脂肪となって内臓を保護したりする重要な機能も担っています。

 

中性脂肪の高値と低値が示す健康リスク

中性脂肪値が高すぎる場合、さまざまな健康リスクが高まります。150mg/dl以上になると脂質異常症と診断され、放置すると動脈硬化を引き起こす原因となります。動脈硬化が進行すると、脳梗塞や心筋梗塞などの重大な疾患のリスクが高まります。

 

具体的には、中性脂肪値が高いと以下のような病気のリスクが高まります:

  • 脳卒中(脳梗塞、脳内出血、くも膜下出血)
  • 狭心症・心筋梗塞
  • 腎不全
  • 大動脈瘤
  • 脂肪肝
  • 糖尿病とその合併症

例えば、脳卒中の場合、発作が起きてから3時間以内の治療開始が重要で、医療費総額の平均は入院で約187.6万円にもなります。心筋梗塞も同様に深刻で、最初の発作で3割の方が命を落とすとも言われています。

 

一方で、中性脂肪値が基準値より低すぎる場合(30mg/dl未満)も注意が必要です。体内に蓄えられたエネルギーが少ない状態となり、疲れやすくなったり、体温維持がうまくできずに低体温や手足の冷えなどの症状が現れることがあります。また、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)などの疾患が隠れている可能性もあります。

 

中性脂肪と他の脂質検査値(コレステロール)の関連性

健康診断では中性脂肪だけでなく、コレステロールの値も同時に測定されることが多いです。中性脂肪とコレステロールは密接な関係があり、中性脂肪が増えすぎると、LDL(悪玉)コレステロールが増加し、HDL(善玉)コレステロールが減少する傾向があります。

 

コレステロールの基準値は以下の通りです:

検査項目 基準値 高値の目安
総コレステロール 140~199mg/dl 220mg/dl以上
HDL(善玉)コレステロール 40~96mg/dl -
LDL(悪玉)コレステロール 70~139mg/dl 140mg/dl以上

中性脂肪とLDLコレステロールがともに高い状態は、動脈硬化のリスクをさらに高めます。血管の壁にコレステロールなどが蓄積すると、血管が狭くなったり硬くなったりして、血液の流れが悪くなります。これが動脈硬化の始まりです。

 

一方、HDLコレステロールは血管内の余分なコレステロールを回収して肝臓に運ぶ働きがあるため、「善玉」と呼ばれています。HDLコレステロールの値が高いほど、動脈硬化のリスクは低くなると言われています。

 

中性脂肪と甲状腺機能の意外な関係性

あまり知られていませんが、中性脂肪値と甲状腺機能には密接な関係があります。甲状腺ホルモンは体内の代謝を調節する重要な役割を担っており、中性脂肪の代謝にも大きく関わっています。

 

中性脂肪値が高い場合、甲状腺ホルモンの血中濃度が低下し、甲状腺機能低下症を引き起こす可能性があります。甲状腺機能低下症になると、代謝が低下して疲れやすくなったり、体重が増加したりする症状が現れます。

 

逆に、中性脂肪値が低すぎる場合は、甲状腺の働きが活発になりすぎて、バセドウ病(甲状腺機能亢進症)を発症するリスクが高まります。バセドウ病になると、動悸や発汗、体重減少、眼球突出などの症状が現れることがあります。

 

健康診断で中性脂肪値に異常が見られる場合は、甲状腺機能の検査も併せて受けることで、より正確な健康状態の把握につながります。特に原因不明の中性脂肪値の変動がある場合は、甲状腺機能の検査を医師に相談してみるとよいでしょう。

 

中性脂肪と生活習慣の改善方法

中性脂肪を増加させる食事と改善のためのポイント

中性脂肪値が高くなる主な原因の一つが食生活です。特に以下のような食習慣が中性脂肪値を上昇させる要因となります:

  • 脂質の摂り過ぎ(特に動物性脂肪)
  • 糖質の過剰摂取(甘いお菓子や清涼飲料水など)
  • アルコールの過剰摂取
  • 食べ過ぎ(カロリーオーバー)
  • 不規則な食事時間

中性脂肪値を改善するためには、以下のポイントを意識した食生活を心がけましょう:

  1. バランスの良い食事を心がける
    • 野菜、果物、全粒穀物、豆類などの食物繊維を多く含む食品を積極的に摂取
    • タンパク質は魚や鶏肉、豆腐などの低脂肪のものを選ぶ
    • 腹八分目を意識し、ゆっくりよく噛んで食べる
  2. 油の種類を見直す
    • バターなどの動物性油脂よりも、オリーブオイルや亜麻仁油などの植物油を使用
    • 不飽和脂肪酸(特にオメガ3脂肪酸)を多く含む食品を取り入れる
    • 青魚(サバ、サンマ、イワシなど)を週に2回程度食べる
  3. 糖質の摂取を適切に管理する
    • 白米や白パンよりも玄米や全粒粉パンを選ぶ
    • 甘い菓子類や清涼飲料水の摂取を控える
    • 果物は食べ過ぎに注意(1日200g程度を目安に)
  4. アルコールは適量を守る
    • 日本酒なら1合、ビールなら大瓶1本程度を目安に
    • 週に1~2日は休肝日を設ける
    • おつまみは揚げ物よりも野菜や低脂肪の食材を選ぶ

食事の改善は一朝一夕にはいきませんが、少しずつ習慣を変えていくことで、中性脂肪値の改善につながります。極端な食事制限は逆効果になることもあるため、バランスを重視した食生活を心がけましょう。

 

中性脂肪を減らす効果的な運動方法と頻度

中性脂肪値を下げるためには、適切な運動習慣を身につけることが非常に効果的です。運動には以下のような効果があります:

  • エネルギー消費による中性脂肪の減少
  • 筋肉量の増加による基礎代謝の向上
  • インスリン感受性の改善
  • HDL(善玉)コレステロールの増加

中性脂肪を効率よく減らすための運動方法と頻度は以下の通りです:

  1. 有酸素運動
    • ウォーキング、ジョギング、サイクリング、水泳など
    • 週に3~5回、1回30分以上を目安に
    • 息が少し上がる程度の強度(会話ができる程度)で継続する
    • 毎日1万歩を目標にするのも効果的
  2. 筋力トレーニング
    • スクワット、腕立て伏せ、腹筋など自重トレーニング
    • 週に2~3回、主要な筋肉群を鍛える
    • 1種目につき10~15回を2~3セット行う
    • 有酸素運動と組み合わせるとより効果的
  3. 日常生活での活動量増加
    • エレベーターやエスカレーターより階段を使う
    • 一駅分歩く
    • デスクワークの合間に立ち上がって軽く体を動かす
    • 家事や庭仕事も立派な運動になる

運動を始める際のポイントは、無理なく続けられる強度と頻度から始めることです。いきなり高強度の運動を行うと、怪我のリスクが高まったり、続かなくなったりする可能性があります。まずは日常生活の中で少しずつ活動量を増やし、徐々に運動の強度や時間を増やしていくことをおすすめします。

 

また、運動前後の水分補給も忘れずに行いましょう。特に暑い季節は熱中症のリスクもあるため、こまめな水分補給が重要です。

 

中性脂肪とアルコール摂取の関係と適切な飲酒量

アルコールの過剰摂取は中性脂肪値を上昇させる大きな要因の一つです。アルコールが中性脂肪に与える影響には以下のようなものがあります:

  • アルコール自体が高カロリー(1g当たり約7kcal)
  • 肝臓でのアルコール代謝が優先され、脂肪の代謝が遅れる
  • アルコールによる食欲増進で食べ過ぎにつながりやすい
  • 脂肪肝のリスクが高まる

中性脂肪値を適正に保つための適切な飲酒量は以下の通りです:

お酒の種類 1日の適量目安 アルコール量
ビール(5%) 中瓶1本(500ml) 約20g
日本酒(15%) 1合(180ml) 約22g
ワイン(12%) グラス2杯(200ml) 約20g
焼酎(25%) 0.6合(110ml) 約22g
ウイスキー(43%) ダブル1杯(60ml) 約20g

健康的な飲酒習慣のポイントは以下の通りです:

  1. 週に2日は休肝日を設ける
    • 連続飲酒を避け、肝臓に休息を与える
    • 休肝日を設けることで、アルコール依存のリスクも低減
  2. おつまみを工夫する
    • 揚げ物や脂っこいおつまみは避ける
    • 枝豆や冷奴、サラダ、刺身など低カロリーな食品を選ぶ
    • 野菜や海藻類など食物繊維が豊富なものを取り入れる
  3. 飲酒のタイミングに注意する
    • 空腹時の飲酒は避ける(アルコールの吸収が早まる)
    • 就寝直前の飲酒は控える(睡眠の質が低下する)
    • 水や茶などでこまめに水分補給をしながら飲む

適量の飲酒は心疾患のリスク低減など、一部の健康効果が報告されていますが、「百薬の長」とはいえ、飲み過ぎは様々な健康リスクを高めます。特に中性脂肪値が高めの方は、アルコール摂取量を見直すことで、数値の改善が期待できます。