健康診断で「血圧高値」と指摘されると不安になりますよね。血圧とは、心臓から送り出された血液が全身へと流れていく際に、血管の内側を押す力のことです。この値は心臓から押し出される血液量(心拍出量)と血管のしなやかさ(血管抵抗)によって決まります。
若い方の血管はゆでたてのマカロニのようにぷるぷるとしていて抵抗が小さいため血圧も低めですが、年齢を重ねるにつれて血管が硬くなり抵抗が増すため、自然と血圧が上昇していきます。
血圧は「収縮期血圧(上の血圧)」と「拡張期血圧(下の血圧)」の2つの数値で表されます。収縮期血圧は心臓がキュッと収縮して最も強く血液を送り出そうとするときの最大血圧、拡張期血圧は心臓がゆったり拡がり次に送り出す血液をためているときの最小血圧です。
血圧は一日の中でも常に変動しています。活発に動いている日中は高く、食事や排泄、入浴といった日常生活動作でも一時的に上昇します。反対に夜の睡眠中は低くなる傾向があります。また季節によっても変動し、春から夏にかけては血圧が下がり、秋から冬にかけては上昇するのが一般的です。
血圧測定の方法は主に3種類あります:
診察室血圧で高血圧と診断される基準は、収縮期血圧/拡張期血圧のどちらか一方、あるいは両方が140/90mmHg以上の場合です。家庭血圧による場合は135/85mmHg以上が高血圧の基準となります。
また、診察室血圧で130/80mmHg以上、家庭血圧で125/75mmHg以上の方は「高値血圧」と診断されます。高値血圧は「高血圧予備群」と考えられるため、それ以上進行しないように生活習慣の改善が推奨されます。
健康的な血圧値の目標は、診察室血圧で「130/80mmHg未満」(理想的には収縮期血圧120mmHg未満)、家庭血圧で「125/75mmHg未満」(理想的には収縮期血圧115mmHg未満)です。
健康診断で血圧高値を指摘されたら、まず慌てないことが大切です。健診時は緊張や環境の変化で一時的に血圧が上昇している可能性があります。これを「白衣高血圧」と呼びます。
正確な評価のためには、まず家庭血圧の測定が重要です。家庭血圧と診察室血圧の組み合わせによって、以下の4つのグループに分類されます:
白衣高血圧の場合、脳心血管疾患の発症リスクが高くないため、すぐに降圧薬による治療を開始する必要はありません。ただし、将来的に治療が必要な高血圧に進展する可能性はあるため、定期的な経過観察が必要です。
一方、仮面高血圧は持続性高血圧と同程度に脳心血管疾患を発症するリスクが高いため、治療が必要となります。健診などの診察室血圧測定の結果に関わらず、定期的に家庭血圧を測ることが脳心血管疾患の発症予防に重要です。
家庭で血圧を測定する際は、正確な値を得るために以下のポイントを守りましょう:
また、職場やストレス状況での血圧も測定し、環境による変動を確認することも有効です。2週間程度の測定データがあれば、医師は適切な判断ができるようになります。
血圧は高すぎるのも問題ですが、低すぎる場合も注意が必要です。低血圧には明確な基準値はありませんが、一般的に上の血圧(収縮期血圧)が100mmHg未満の場合に低血圧と診断されることが多いです。
低血圧は大きく3つに分類されます:
血圧が低い方が心臓や血管への負担が少ないと言われていますが、低血圧の状態が続くと全身に十分な血液が供給されなくなり、酸素や栄養が細胞に行き渡らなくなります。その結果、以下のような症状が現れることがあります:
特に起立性低血圧は、高齢者や自律神経の乱れがある方に多く見られます。急に立ち上がった際のめまいは転倒リスクを高めるため、注意が必要です。
血圧は季節によって変動することをご存知でしょうか。一般的に春から夏にかけては血圧が下がり、秋から冬にかけては上昇する傾向があります。これは気温の変化が血管の収縮や拡張に影響するためです。
特に冬場は注意が必要です。寒さによって血管が収縮し血圧が上昇しやすくなります。また、朝方の急激な気温変化も血圧上昇の原因となります。暖かい布団から出て冷たい部屋に出ると、血管が急激に収縮して血圧が上昇します。この「ヒートショック」は脳卒中や心筋梗塞のリスクを高めます。
季節変動に対応するための対策としては:
気温差による血圧変動は、高血圧の方だけでなく、正常血圧の方や低血圧の方にも影響します。特に高齢者は血管の弾力性が低下しているため、より大きな影響を受けやすいので注意が必要です。
血圧の管理には薬物療法も重要ですが、基本は生活習慣の改善です。高血圧も低血圧も、日常生活の見直しで改善できる部分が大きいのです。
高血圧改善のためのポイント:
低血圧改善のためのポイント:
生活習慣の改善は即効性はありませんが、継続することで確実に効果が現れます。健康診断で血圧の異常を指摘されたら、まずは家庭血圧を測定し、必要に応じて医療機関を受診しましょう。そして医師の指導のもと、適切な生活習慣改善と必要であれば薬物治療を組み合わせて、健康的な血圧を維持することが大切です。