血圧の高値と低値を健康診断で指摘された方の基本知識

健康診断で血圧の異常を指摘されることは珍しくありません。本記事では高血圧と低血圧の基準値や症状、家庭での正しい測定方法、生活改善のポイントまで詳しく解説します。あなたの血圧は本当に問題があるのでしょうか?

血圧の基本知識と健康診断での正しい理解方法

血圧の基本情報
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血圧とは

心臓から送り出された血液が血管の内側を押す力のこと。上の血圧(収縮期血圧)と下の血圧(拡張期血圧)で表されます。

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正常値の目安

診察室血圧:140/90mmHg未満、家庭血圧:135/85mmHg未満が基準となります。

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注意すべき状態

高血圧は自覚症状が少なく、放置すると動脈硬化や心疾患などの合併症リスクが高まります。

健康診断で「血圧高値」と指摘されると不安になりますよね。血圧とは、心臓から送り出された血液が全身へと流れていく際に、血管の内側を押す力のことです。この値は心臓から押し出される血液量(心拍出量)と血管のしなやかさ(血管抵抗)によって決まります。

 

若い方の血管はゆでたてのマカロニのようにぷるぷるとしていて抵抗が小さいため血圧も低めですが、年齢を重ねるにつれて血管が硬くなり抵抗が増すため、自然と血圧が上昇していきます。

 

血圧は「収縮期血圧(上の血圧)」と「拡張期血圧(下の血圧)」の2つの数値で表されます。収縮期血圧は心臓がキュッと収縮して最も強く血液を送り出そうとするときの最大血圧、拡張期血圧は心臓がゆったり拡がり次に送り出す血液をためているときの最小血圧です。

 

血圧は一日の中でも常に変動しています。活発に動いている日中は高く、食事や排泄、入浴といった日常生活動作でも一時的に上昇します。反対に夜の睡眠中は低くなる傾向があります。また季節によっても変動し、春から夏にかけては血圧が下がり、秋から冬にかけては上昇するのが一般的です。

 

血圧の測定方法と診断基準の正しい知識

血圧測定の方法は主に3種類あります:

  1. 診察室血圧:病院やクリニック、健康診断で測定する血圧
  2. 家庭血圧:自宅で測定する血圧
  3. 自由行動下血圧:特殊な機器をつけて15分から1時間ごとに測定する血圧(24時間血圧測定とも呼ばれます)

診察室血圧で高血圧と診断される基準は、収縮期血圧/拡張期血圧のどちらか一方、あるいは両方が140/90mmHg以上の場合です。家庭血圧による場合は135/85mmHg以上が高血圧の基準となります。

 

また、診察室血圧で130/80mmHg以上、家庭血圧で125/75mmHg以上の方は「高値血圧」と診断されます。高値血圧は「高血圧予備群」と考えられるため、それ以上進行しないように生活習慣の改善が推奨されます。

 

健康的な血圧値の目標は、診察室血圧で「130/80mmHg未満」(理想的には収縮期血圧120mmHg未満)、家庭血圧で「125/75mmHg未満」(理想的には収縮期血圧115mmHg未満)です。

 

血圧の高値が指摘された後の正しい対応手順

健康診断で血圧高値を指摘されたら、まず慌てないことが大切です。健診時は緊張や環境の変化で一時的に血圧が上昇している可能性があります。これを「白衣高血圧」と呼びます。

 

正確な評価のためには、まず家庭血圧の測定が重要です。家庭血圧と診察室血圧の組み合わせによって、以下の4つのグループに分類されます:

  1. 非高血圧:診察室血圧も家庭血圧も正常
  2. 白衣高血圧:診察室血圧は高いが家庭血圧は正常
  3. 仮面高血圧:診察室血圧は正常だが家庭血圧が高い
  4. 持続性高血圧:診察室血圧も家庭血圧も高い

白衣高血圧の場合、脳心血管疾患の発症リスクが高くないため、すぐに降圧薬による治療を開始する必要はありません。ただし、将来的に治療が必要な高血圧に進展する可能性はあるため、定期的な経過観察が必要です。

 

一方、仮面高血圧は持続性高血圧と同程度に脳心血管疾患を発症するリスクが高いため、治療が必要となります。健診などの診察室血圧測定の結果に関わらず、定期的に家庭血圧を測ることが脳心血管疾患の発症予防に重要です。

 

血圧の家庭での正確な測定テクニック

家庭で血圧を測定する際は、正確な値を得るために以下のポイントを守りましょう:

  1. 測定器の選択:上腕にカフを巻くタイプの血圧計が推奨されています。手首式血圧計では、カフを巻く血管の太さや硬さの影響から上腕とは異なる血圧値が表示される可能性があります。

     

  2. 測定のタイミング:毎日同じ時刻に測定します。朝は起床後1時間以内、排尿後、朝食前、薬を飲む前に測定し、夜は就寝前に測定するのが理想的です。

     

  3. 測定の回数:朝と夜にそれぞれ2回測定し、その平均値を記録します。

     

  4. 測定環境:できる限りリラックスした環境で測ることが重要です。食事や入浴の直後は避け、排尿や排便をすませた後に座位で測定してください。

     

  5. 記録の継続:血圧手帳などに継続的に記録し、変動の傾向を把握することが大切です。

     

また、職場やストレス状況での血圧も測定し、環境による変動を確認することも有効です。2週間程度の測定データがあれば、医師は適切な判断ができるようになります。

 

血圧の低値が引き起こす意外な健康リスク

血圧は高すぎるのも問題ですが、低すぎる場合も注意が必要です。低血圧には明確な基準値はありませんが、一般的に上の血圧(収縮期血圧)が100mmHg未満の場合に低血圧と診断されることが多いです。

 

低血圧は大きく3つに分類されます:

  1. 本態性低血圧:原因が無いまま常に血圧が低い状態
  2. 起立性低血圧:横になった状態から急に立ち上がったり、長時間立ち続けたりすることで血圧が下がる状態
  3. 二次性低血圧:病気が影響して血圧が下がる状態

血圧が低い方が心臓や血管への負担が少ないと言われていますが、低血圧の状態が続くと全身に十分な血液が供給されなくなり、酸素や栄養が細胞に行き渡らなくなります。その結果、以下のような症状が現れることがあります:

  • めまいや立ちくらみ
  • 身体のだるさや疲れやすさ
  • 食欲不振
  • 頭痛
  • 集中力の低下
  • 冷え性

特に起立性低血圧は、高齢者や自律神経の乱れがある方に多く見られます。急に立ち上がった際のめまいは転倒リスクを高めるため、注意が必要です。

 

血圧の季節変動と気温差対策の重要性

血圧は季節によって変動することをご存知でしょうか。一般的に春から夏にかけては血圧が下がり、秋から冬にかけては上昇する傾向があります。これは気温の変化が血管の収縮や拡張に影響するためです。

 

特に冬場は注意が必要です。寒さによって血管が収縮し血圧が上昇しやすくなります。また、朝方の急激な気温変化も血圧上昇の原因となります。暖かい布団から出て冷たい部屋に出ると、血管が急激に収縮して血圧が上昇します。この「ヒートショック」は脳卒中や心筋梗塞のリスクを高めます。

 

季節変動に対応するための対策としては:

  1. 室温管理:特に冬場は部屋の温度差を少なくする。寝室と浴室、トイレなどの温度差を小さくすることが重要です。

     

  2. 適切な服装:外出時は防寒対策をしっかりと行い、体温の急激な低下を防ぎます。

     

  3. 入浴方法の工夫:熱いお湯での入浴は避け、41度前後のぬるめのお湯にゆっくりつかりましょう。

     

  4. 水分摂取:夏場は汗で水分が失われやすいため、こまめな水分補給が必要です。脱水は血液の粘度を上げ、血圧上昇の原因となります。

     

  5. 測定頻度の調整:季節の変わり目は特に注意して血圧測定を行いましょう。

     

気温差による血圧変動は、高血圧の方だけでなく、正常血圧の方や低血圧の方にも影響します。特に高齢者は血管の弾力性が低下しているため、より大きな影響を受けやすいので注意が必要です。

 

血圧改善のための効果的な生活習慣改善法

血圧の管理には薬物療法も重要ですが、基本は生活習慣の改善です。高血圧も低血圧も、日常生活の見直しで改善できる部分が大きいのです。

 

高血圧改善のためのポイント:

  1. 塩分制限:1日の塩分摂取量は6g未満を目指しましょう。味付けを薄くする、加工食品や外食を控えるなどの工夫が効果的です。

     

  2. 適度な運動:ウォーキングなどの有酸素運動を週に3〜5回、30分程度行うことで血圧低下効果が期待できます。無理のない範囲で継続することが大切です。

     

  3. 適正体重の維持:BMIが25を超える場合は、減量することで血圧低下効果が期待できます。体重が5%減少すると、収縮期血圧が約4mmHg低下するというデータもあります。

     

  4. アルコール摂取の制限:過度の飲酒は血圧を上昇させます。男性は日本酒換算で1日1合程度、女性はその半分程度に抑えましょう。

     

  5. 禁煙:喫煙は血管を収縮させ、血圧を上昇させる原因となります。また、動脈硬化を促進するため、高血圧の合併症リスクも高めます。

     

  6. ストレス管理:ストレスは交感神経を刺激し、血圧を上昇させます。適度な休息や趣味の時間を持つなど、ストレス解消法を見つけることが大切です。

     

低血圧改善のためのポイント:

  1. タンパク質の摂取:肉や魚、大豆製品などのタンパク質を積極的に摂取しましょう。

     

  2. ミネラルの摂取:野菜や果物、海藻類などからミネラルを摂取します。特に鉄分は貧血予防にも効果的です。

     

  3. 適度な塩分摂取:低血圧の方は極端な減塩は避け、適度な塩分を摂取しましょう。

     

  4. クエン酸の摂取:レモンや梅干しなどのクエン酸を含む食品は、疲労回復や血行促進に効果的です。

     

  5. 軽い運動:ウォーキングなどの軽い運動でふくらはぎの筋肉を鍛え、血液循環を促進しましょう。

     

  6. 水分摂取:起床時や食事の前後に水分を摂取することで、血液量を維持し血圧の安定に役立ちます。

     

  7. 就寝・起床時の注意:急に起き上がらず、まずは座位をとってから立ち上がるようにしましょう。

     

生活習慣の改善は即効性はありませんが、継続することで確実に効果が現れます。健康診断で血圧の異常を指摘されたら、まずは家庭血圧を測定し、必要に応じて医療機関を受診しましょう。そして医師の指導のもと、適切な生活習慣改善と必要であれば薬物治療を組み合わせて、健康的な血圧を維持することが大切です。