高血糖とは、血液中のブドウ糖濃度が異常に高い状態を指します。健康な人の場合、空腹時血糖値は110mg/dL未満が正常とされています。しかし、この数値を超えると、糖尿病予備群や糖尿病の可能性が出てきます。
高血糖の主な症状には以下のようなものがあります:
これらの症状は血糖値が高くなるにつれて徐々に現れることが多く、初期段階では自覚症状がないこともあります。そのため、定期的な健康診断で血糖値をチェックすることが重要です。
血糖値の基準値は以下のように分類されます:
分類 | 空腹時血糖値 | 食後2時間血糖値 |
---|---|---|
正常型 | 110mg/dL未満 | 140mg/dL未満 |
境界型 | 110〜125mg/dL | 140〜199mg/dL |
糖尿病型 | 126mg/dL以上 | 200mg/dL以上 |
高血糖の状態が続くと、血管壁にダメージを与え、動脈硬化を促進します。これにより、心筋梗塞や脳卒中などの重大な合併症のリスクが高まります。特に注意が必要なのは、自覚症状がなくても体内では血管へのダメージが進行していることです。
高血糖には「空腹時高血糖」と「食後高血糖」の2つのパターンがあります。特に注目すべきは「食後高血糖」です。これは食事後に血糖値が急上昇し、2時間経っても140mg/dL以上の高い値が続く状態を指します。
食後高血糖が重要視される理由は以下の通りです:
健康な人では、食事によって血糖値が上昇しても、すい臓から適切なタイミングで適量のインスリンが分泌され、約2時間で空腹時の値に戻ります。しかし、糖尿病や糖尿病予備群の人では、インスリンの分泌量が少なかったり、分泌速度が遅かったりするため、食後も高血糖の状態が続いてしまいます。
特に注目すべき点として、アジア人を対象とした調査では、食後2時間値のみが高値を示す「糖尿病型」の死亡リスクは、「正常型」の約3.5倍も高いことが明らかになっています。また、同じ「境界型」でも、食後高血糖の人(IGT)は、空腹時血糖値が高い人(IFG)よりも心血管系疾患による死亡リスクが高いことが示されています。
つまり、空腹時血糖値が正常範囲内であっても、食後の血糖値が高い場合は注意が必要なのです。健康診断では空腹時血糖値だけでなく、食後血糖値も確認することをおすすめします。
高血糖が極端に悪化すると、「高血糖緊急症」という命に関わる状態に陥ることがあります。これは急激に生じる糖代謝の破綻状態で、放置すると生命の危険性もある重篤な合併症です。
高血糖緊急症は主に以下の2種類に分けられます:
高血糖緊急症の主な症状には以下のようなものがあります:
特に糖尿病ケトアシドーシス(DKA)では、意識のない状態での深く大きな呼吸や、フルーティ(梨のような)な口臭が特徴的です。
高血糖緊急症は必ずしも糖尿病と診断された人だけでなく、糖尿病と診断されたことがない人や境界型と診断されていた前糖尿病状態の人にも発症することがあります。そのため、高血糖の症状が強く出ている場合は、すぐに医療機関を受診することが重要です。
治療は基本的に低用量のインスリン持続静脈内投与と水・電解質の適切な補充が行われます。早期発見と適切な治療が命を救う鍵となります。
血糖値のパターンを理解することは、自分の状態を把握し適切な対策を立てるために重要です。血糖値パターンは主に以下の3つに分類されます:
特に注目すべきは「耐糖能異常」と呼ばれる状態です。これは体内でブドウ糖を十分に処理できず、血糖値を正常に戻す働きが弱くなっている状態を指します。耐糖能異常は動脈硬化を促進することが分かっており、放置すると脳卒中などの大血管障害を引き起こすリスクが高まります。
耐糖能異常には以下の2つのタイプがあります:
研究によると、同じ境界型でもIGT(食後高血糖)の人はIFG(空腹時高血糖)の人よりも心血管系疾患による死亡リスクが高いことが示されています。つまり、「空腹時高血糖」よりも「食後高血糖」の方が心血管系疾患への影響が大きいのです。
自分の血糖値パターンを知るためには、空腹時血糖値だけでなく、食後の血糖値も測定することが重要です。また、HbA1c(ヘモグロビンA1c)の値だけでは1日の血糖変動パターンを評価できないため、食後の血糖値にも注目することで、よりよい血糖コントロールにつなげることができます。
健康診断で血糖値が気になる方は、医師に相談して詳細な検査を受けることをおすすめします。早期発見と適切な対策が、将来の健康リスクを大きく減らす鍵となります。
高血糖を改善するためには、薬物療法だけでなく、日常生活における食事と運動の管理が非常に重要です。特に食後高血糖を防ぐための対策を紹介します。
食事療法のポイント
運動療法のポイント
生活習慣の改善
これらの対策を日常生活に取り入れることで、食後高血糖を含む高血糖の改善に効果が期待できます。ただし、すでに医師から治療を受けている場合は、自己判断で治療内容を変更せず、医師の指導のもとで生活習慣の改善を行いましょう。
また、定期的な血糖値のモニタリングを行い、自分の体の変化を把握することも大切です。最近では、自宅で簡単に血糖値を測定できる機器も普及しているので、医師と相談しながら活用するとよいでしょう。