高尿酸血症とは、血液中の尿酸濃度が通常よりも高い状態を指します。一般的に尿酸値が7.0mg/dl以上の場合に高尿酸血症と診断されます。注目すべき点は、高尿酸血症自体には明確な自覚症状がないことが多いという特徴です。多くの方は健康診断で尿酸値が高いと指摘されて初めて気づくことがほとんどです。
尿酸は体内で生成される老廃物で、通常は腎臓から排泄されます。この尿酸は遺伝子DNAの原材料の一つであるプリン体が不要となってできた物質です。体内でプリン体や尿酸が過剰に作られたり、腎臓からの排泄が十分でない場合に高尿酸血症となります。
日本における高尿酸血症のタイプ別割合は以下のようになっています:
高尿酸血症が進行すると、尿酸が結晶化して関節に蓄積し、痛風発作を引き起こすことがあります。また、腎臓に蓄積して腎機能障害を引き起こす「痛風腎」や、腎臓・尿管結石の原因にもなります。
高尿酸血症と痛風は密接に関連しています。高尿酸血症が長期間続くと、尿酸の一部が溶けきれなくなり結晶化します。この結晶化した尿酸が痛風の原因物質となります。
痛風発作は、足の親指の付け根に突然の激痛として現れることが特徴的です。時には足首や膝関節にも症状が現れることがあります。痛みの強い部位では皮膚が赤くはれ上がり(発赤)、熱感を伴うことが多いです。
痛風発作のきっかけとなるのは、以下のような要因です:
興味深いことに、尿酸値が正常上限程度でも痛風発作を起こすケースがあります。これは尿酸値の急激な変動が発作を誘発するためと考えられています。
また、痛風に似た症状を示す「偽痛風」という疾患もあります。これは尿酸ではなく、ピロリン酸カルシウムという物質が関節に蓄積して炎症を起こすものです。主に膝などの大きな関節に痛みを生じるのが特徴です。
高尿酸血症の原因は多岐にわたりますが、最も一般的なのは生活習慣の乱れです。特に以下の要因が大きく影響します:
生活習慣以外の原因としては、以下のようなものがあります:
特にビールは、アルコール自体が尿酸の排泄を妨げるだけでなく、プリン体も多く含んでいるため、高尿酸血症の原因として特に注意が必要です。
高尿酸血症は単独で存在するだけでなく、他の生活習慣病とも密接に関連しています。特に注目すべきは、高尿酸血症が動脈硬化による大血管障害(狭心症、心筋梗塞、脳梗塞など)の危険因子となることです。
高尿酸血症の患者さんには、以下の疾患が合併しやすい傾向があります:
これらの症状が重なると、メタボリックシンドロームと診断されることも少なくありません。つまり、高尿酸血症は単なる痛風のリスク因子としてだけでなく、心血管疾患のリスク因子としても重要な意味を持っています。
トピロキソスタットという選択的キサンチンオキシドレダクターゼ阻害薬を用いた研究では、高尿酸血症患者の治療において、尿酸値の効果的な低下が確認されています。特に慢性腎臓病を伴う高尿酸血症患者に対する効果が臨床試験で示されており、実臨床での安全性と有効性も確認されつつあります。
高尿酸血症の予防と管理において、水分摂取は意外にも重要な役割を果たします。十分な水分を摂ることで、血液中の尿酸濃度を薄め、腎臓からの尿酸排泄を促進する効果があります。
水分摂取の重要性:
特に水やお茶などのノンカフェイン飲料が推奨されます。カフェインを多く含む飲料は利尿作用があり、脱水を引き起こす可能性があるため注意が必要です。
一日の適切な水分摂取量は個人差がありますが、一般的には1.5〜2リットル程度が目安とされています。特に運動時や暑い季節には、さらに多くの水分摂取が必要です。
また、アルコール(特にビール)は尿酸値を上昇させる要因となるため、摂取量を控えることが重要です。アルコールを摂取する際は、同時に水分も十分に摂るよう心がけましょう。
高尿酸血症の管理において、食事療法は非常に重要です。特にプリン体の摂取を適切に制限することが基本となります。プリン体は体内で尿酸に変換されるため、その摂取量を控えることで尿酸値の上昇を抑えることができます。
プリン体含有量による食品の分類:
【極めて多い(要注意食品)】
【多い(摂取量に注意)】
【少ない(適度に摂取可能)】
【極めて少ない(積極的に摂取可能)】
食事療法を実践する際のポイント:
また、食事の量も重要で、腹八分目を心がけることが推奨されています。肥満は高尿酸血症の危険因子の一つであるため、適切なカロリー摂取を心がけ、徐々に体重を落としていくことも効果的です。
高尿酸血症の治療において、生活習慣の改善だけでは尿酸値のコントロールが難しい場合や、すでに痛風発作を経験している場合には、薬物療法が必要となります。
高尿酸血症の薬物治療は、大きく分けて以下の2種類があります:
トピロキソスタットは、選択的キサンチンオキシドレダクターゼ阻害薬として日本で使用されている比較的新しい薬剤です。臨床試験では、慢性腎臓病を伴う高尿酸血症患者に対して効果的に尿酸値を低下させることが示されています。
使用成績調査によると、トピロキソスタットの副作用発現率は4.38%(2033例中89例)で、主な副作用は痛風関節炎(0.59%)、肝機能異常(0.54%)、腎機能障害(0.34%)などでした。
薬物治療を行う際の目標尿酸値は、一般的に6.0mg/dl未満とされています。特に痛風発作や痛風結節がある場合は、痛風の再発を防ぐためにこの値を目標とします。
なお、痛風発作の急性期には、痛み止めの薬(非ステロイド性抗炎症薬など)を使用します。この時期に尿酸値を急激に変動させると症状が悪化する可能性があるため、新たに尿酸降下薬を開始することは一般的に避けられます。
痛風発作は、高尿酸血症の最も代表的な合併症です。突然の激痛を特徴とし、適切な対処が必要となります。
痛風発作時の基本的な対処法: